若い子ぶっちゃけ病

 あんまり詳しいことは書けないんだけど、清水富美加の騒動があったとき、いくつかの会社をはさみながら、弊社も巻き添えを食らった。結果的には深夜残業を2回やっただけで済んだので、別に恨み節はないっちゃないんだが、こういうことがあるから芸能の仕事はなるたけ避けていたのに受けるときは受けるもんだな、と思いながら奔走していた。そんで須藤凛々花の報道を見たとき、清水の件を連想してしまったんだが「理解されなくても、他人に迷惑をかけても、わたし自分に正直に生きたい」というのは今の子の流行なんかなと思う。

 

 いきなり髪を切った峰岸しかり、既存のアイドルと違ってAKBは、周囲の余波を考えず、たまに暴走しちゃう子がいて、それが良くも悪くも世間の注目を浴びる傾向があると既に多くの媒体で指摘されているが、ああいう多少カオは良いけど、年頃やや性格に不安定な女の子も含めて、何百人も大量管理しなくちゃいけない運営側も大変だよなー、と思いながら見てる。ついでに、そこまで問題を起こさない既存の他アイドルグループに対して「若いのにちゃんとしてるんだな」的な勝手に再評価をしたりしている。アイドルじゃないけど芦田愛菜とか、しっかりしすぎてやばい。

 

 そんでもって話は戻るんだが、須藤も「言うか言わないか迷った。でも結果ファンを騙してることに自分が耐えられなかった」みたいなことを言ってて、清水も「私もずっと耐えてた」的なことを著書に書いてるんだが、僕には「もっと上手な事態の避け方はあったやろ」という思いを払拭することはできなかった。別に沈黙が美学というつもりはないが「言わない」ということもまた自己と組織の利益の可能性たることが彼女らにはわからない。あるいは、それも秋元の仕掛けかもしれないが。清水の場合は、ちょっと複雑な事情がありそうなんで、あまり踏み込めないところはあるんだけど「秘密を言うか言わないか」というギリギリの局面で「言っちゃえ」という選択肢を選ぶのは、ちょっと今の子っぽいなーと思う。

 

 既存のアイドルや女優が恋人がいつつもギリギリまで黙っている、または引退後十数年経って「あの頃、実は~」って言うのがお約束だったのは、彼女らが「秘密を持つ」という強さを持っていたからな気がする。まあ今の子だって、それぐらい持ってますよといわれれば、ほとんどの場合、持ってるんだろうが、ポロポロ言っちゃう連中が出てきてるってことは、ちょいちょい抱えられない子が出てきたんかなと思う。

 

 僕はもうおじさんなので仕事でも若い子の管理という役割が多いんだが、自分の頃と比べて、今の新卒はびっくりするぐらいしっかりしてる。よくおばさんが「若いのにしっかりしてるわね~」と小さい子に言うのを見てたが、ああいう心境が半径2メートル以内に常にある。


 一方この前、新卒の子と一日一緒になる機会があったんだが、その際、その子がちょっとしたミスをした。まあ些細なことなんだけど、そのままだと後々、大きなことになりそうなので、ちょっと強めに注意をした。

 その後さして気にもせず、僕も軽口を言ったりして一日は終わったんだが、次の日もう一度「すみません」という神妙な面持ちで口頭の言葉と、さらに謝罪の長文メールまで着た。

 その「すみません」のオーバーキルを見ながら感じたのは、さながら「すみません」と言う事で、僕に許されたいんじゃなくて、僕に「いいから気にするなよ」と言われて、自分が解放されたいだけなんじゃないか、という印象だった。申し訳ないが、もう忘れてたのに、ちょっとウザいな、と注意した時すらなかった感情が一瞬、沸いた。

 5秒くらい迷ったが、仕事に慣れれば、しっかりするやろと思って、そのこと自体については特に指摘しなかった。

 

 ただ、すまないと思ったとき、うしろめたいと思ったとき、一回、呑み込むことで、態度で示すっつーのが本当の誠意のありようだとオジサン世代としては思ってたんだが、言ったことで問題が拡大する可能性を無視してまで、相手の許しを得ようと発露しちゃうっていうのは、自分で耐え切れない弱さじゃねーかって思うし、須藤の「言う覚悟」も抱え込めなかったそれを、自分のなかにある精一杯、綺麗な言葉を使ってるようにしか僕には見えなかった。とはいえ芸能界なんて見えない実情も他にあるかもしんないから、これに関しては僕が間違ってる可能性は大だ。それで正しい悪いの是非を論じる気はないんだけど、繰り返すようだが、彼女みたいな「言う」を選ぶ子が増えてきたなって思う。

 

 

 けれども、こういうジャッジはどうやって学ぶんだろ、というとわかんない。自分の場合は、とりあえず父親だったような気がする。とても責任のある仕事をしてたし、戦前生まれの古い男を見て育ってしまったせいで「言わない覚悟」を重要視する考えになったのかもしれない。

 ただそれが行き過ぎて、たまに「いや言えよ」と友達にも部下にも恋人にも、よく怒られる弊害もございます。

 あれ…ひょっとして僕…ただのコミュ障……